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広島県での葬儀(法事)の風習
葬儀や法事には、各地域ならではの風習やしきたりがあります。中には、知っていなければ驚いてしまう風習もあるものです。その地域に多い宗派ならではのものや、土地柄に由来するものなど、様々な風習があります。
今回は、広島県で見られる葬儀(法事)の風習をご紹介致します。
目次
「酉の日」には葬儀を避ける風習がある
「友引」に葬儀を避ける傾向があることをご存じの方は多いのではないでしょうか。「友」を「引く」という意味合いから縁起が悪いとして葬儀を避けるようになったという迷信が元にある風習です。広島県では、「友引」の葬儀を避けるのと同じように、12日に1度巡ってくる「酉の日」に葬儀を避ける風習が一部地域に今も残っています。
「酉の日」に葬儀を避ける理由には諸説あります。広島県の農村地帯では、「酉の日」に田植えをすると凶事が起こると考えられているため、葬儀も避けるようになったという説。また、「酉」=「取り」という連想から、「命取り」になるとして、葬儀を避けるようになったという説もあります。
現代では葬儀場・火葬場ともに365日ほぼ休みなしで稼働しているところも多く、迷信にとらわれずに葬儀を営むケースも見られます。
会葬御礼品に不祝儀袋と祝儀袋のセットを渡す習慣がある
広島県では、香典を渡したあとに受け取る会葬御礼品に、不祝儀袋と祝儀袋をセットにしたものを渡すことがあります。「今回の葬儀でお使いになった不祝儀袋をお返しするとともに、良いことが訪れることを祈って祝儀袋をセットにする」という習慣は合理的であるといえますね。最近ではハンドタオルや海苔、塩など、ほかの品物を返礼品に選ぶケースも増えています。
他県では、不祝儀袋を家に用意しておくこと自体を「縁起が悪い」と考える場合もあるため、返礼品に「不祝儀袋と祝儀袋のセットを渡す」習慣を知らない場合は驚いてしまう人もいるかもしれません。
焼香の際に「焼香銭」と呼ばれる小銭を置く風習がある
安芸地方などに多い浄土真宗の家で見られる風習に、焼香の際に小銭をお盆に載せる「焼香銭」があります。本来、焼香のときに使用する線香は、参列者が持参するのが習わしでした。しかし、現代では葬儀社や寺院側が線香を用意することが多いため、「線香代」として小銭を置くようになったと考えられています。
「御香典」という言葉は、「線香代」という意味合いを持っています。そのため、御香典を持参する通夜・葬儀では「焼香銭」の風習が見られない場合もあります。
しかし、法事の際に持参する金封は「御香典」ではなく「御仏前」となります。そのため、金封とは別に、線香代として焼香をする際に焼香盆に100円程度の小銭を置く風習があるのです。
焼香盆に載せられた小銭は、最後にお寺様に布施として渡すことが習わしです。
出棺の際、3回棺を回す風習がある
広島県内の一部地域では、出棺の際、棺を3回ぐるぐると回す風習が見られます。「三回回し」や「棺回し」と呼ばれるしきたりです。棺を回す理由にも諸説あり、故人の方向感覚を狂わせ、現世に戻ってこられないようにすることで無事に成仏して欲しいという願いが込められているという説、また現世で起こした罪をなくす「滅罪信仰」からきているという説もあります。「回る」という儀式は、古来より人と神霊がつながるものであると考えられてきました。仏教の儀礼の中にも、山岳仏教や四国遍路など、「回る」という行為を信仰要素として捉えているものが多く見られます。聖地を「回る」修行を行なうことにより、「今までの罪が許される」という信仰が生まれたわけです。こうした影響を受け、「棺を回す」ことで、故人が仏教的修行を行なうことになり、生前の罪をなくすことができるという風習が生まれたのだと考えられています。
出棺の際に「茶碗割り」を行なう風習がある
主に備後地方で多く見られる風習として、出棺の際に故人の愛用していた茶碗を割る「茶碗割り」という風習があります。仏教の多くの宗派では、魂が成仏するまでに49日間かかるとされており、それまでの間、魂は現世をさまよっているとされています。
その間、生前に愛用していたものが残っていると、魂が家に舞い戻ってきてしまうと考えられており、「無事に迷わず成仏して欲しい」という願いから、愛用していた茶碗を割るという風習があるのです。
なお、信仰心があれば、死後すぐに成仏できる「即得往生」の考えを持つ浄土真宗では、魂が死後迷うという考え方をしないため、「茶碗割り」の風習は行ないません。
位牌に白い布をかける風習がある
備後地方の一部、禅宗の家庭で見られる風習に、「故人の位牌に白いさらし布をかける」という風習があります。位牌にかけられたさらし布は、四十九日法要までの間、少しずつすり上げていくものとされています。
他地域では見かけない変わった風習のひとつです。